国際メディアビジネスの最前線で活かされるUWCでの経験〜島田和大(バイアコム インターナショナル ジャパン)

<いざ、カナダへ!>

成田を出発して、シアトル、バンクーバーと飛行機を乗り継ぎ、目的地であるビクトリアに着いた時には日本を発ってから既に15時間が経過していた。1991年9月、16歳の私は期待と不安が入り交じる複雑な心境で初めてカナダの地を踏んだ。ビクトリアは晩夏の青空が広がっていて、長旅をいやしてくれるようなさわやかな気候だった。「これから2年間どうなるかわからないけど、とにかく頑張ろう」と自分に言い聞かせながら迎えのバンに乗り込んだ。私が海外留学を意識するようになったのは、中学校で初めて英語を学び、異国の人とコミュニケーションをすることに漠然とした「喜び」を感じた頃だった。幼少の頃の海外経験は全くなかったが、海外に出ていろいろな人と話したり日本のことを海外の人に伝えたりしたいという純粋な希望は強かったと思う。そして、そんな希望を120%かなえてくれる機会を提供してくれたのがUnited World College(UWC)であった。世界約70カ国から集まる同年代の生徒たちと2年間勉学と生活を共にする。しかもフルスカラシップ(奨学金)付きである。経団連から送られてきた募集要項を読んだ瞬間に、私は「これだ!」と飛びついた。内容を読んで驚いたのは、UWCが提供するカリキュラムの充実度である。国際バカロレア(IB)という世界的に認められている学業資格の取得に向けて授業が進められ、勉強だけではなく社会奉仕活動や課外活動も必須科目となる。授業の内容は日本の高校のそれとは180度違い、暗記はほとんどなくディスカッションを中心に「考える」ということに重点を置いた教育方法である。さらに、UWCの基本理念として、InternationalUnderstandingという言葉がある。世界各国から集まる生徒と共に学び、生活をすることによって国際理解を深めようということである。この精神はごく基本的なことであるが、冷戦後も世界各地で紛争が絶えない現在の世界でわれわれが再認識しなければならない考え方だと思う。話を戻そう。無事選考試験を突破して、第一希望であったカナダのピアソン・カレッジへの派遣も決まった。他にイギリス、イタリア、アメリカ、シンガポールもあったが、カナダを希望したのは実は「他の学校と比べて食べ物が一番おいしい」ということをある人から聞いていたからである。そしてその期待は裏切られなかった(ピアソンに派遣される女の子は2年間で平均10キロ太るという噂もある)。

<友人と先生に恵まれ、充実したカナダでの2年間の生活>

ピアソン・カレッジに着いてまず驚いたのがその学校の様子である。学校は森の中にあり周囲には海と木しかない。そして建物は全て木造建てで、一見サマーキャンプ場ではないかと勘違いしてしまうほどである。しかし今から思えば、海や山などの美しい自然に恵まれた環境の中で二年間も過ごせたというのはかなり贅沢なことであった。次に戸惑ったのはやはり英語である。日本では英語が得意であったとはいえ、所詮日本の学校英語レベル。友人、先生が話す言葉の全てが英語という環境にいきなり飛び込み、思うように言いたいことが言えなかったり、授業の内容がよく分からなかったりと、着いた当初はストレスが溜まった。しかし、そんなストレスは大切な友人、そして先生との出会いで解消された。言葉の問題さえなければあとは生身の人間同士、しかも同年代である。人間関係の悩み、将来の進路、恋人との関係などルームメイトや他の友人と語り合ううちに、真の友情が生まれた。また、日本贔屓で日本語を話すカナダ人の先生とも何でも悩みを話し合えるような関係を築くことができた。このような人たちと語り合ううちに、自分の気づかないところで英語力もアップし、気がついたら「自分が英語を話している」ということを意識しないくらい自然と英語が話せるようになっていた。言葉のハンディを乗り越えた二年目は勉強の方も厳しくなったが、課外活動も充実し、本当にアッという間に過ぎてしまった。ピアソンで出会った友人や先生との交流は卒業後13年経とうとしている現在も続いている。

<イギリスでの大学生活、就職、そして国際メディアビジネスの最前線へ>

ピアソン・カレッジを卒業後は、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に進学し国際関係学を専攻した。そして、総合商社、メディアベンチャーなどを経て、2006年2月からはグローバルメディア企業であるバイアコム社で事業戦略の立案や提携・買収交渉に携わっている。仕事は顧客や関係者との交渉が多いが、UWCで培った「人とコミュニケートする能力」がさまざまなビジネス交渉で役に立っているのは言うまでもない。これは、「交渉術」といわれる小手先の手段ではなく、「相手の立場を理解しながら自分の意見を述べ、最終的に双方が満足する解答を見いだす」という、言うのは簡単だが実行するのが難しいプロセスである。私はUWCでの留学経験を通じて、英語力だけではなく、コミュニケーション能力を高めることができたと思っている。今後もメディアビジネスを通じて、世界平和と国際理解の促進に貢献していきたい。

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UWCカナダ・ピアソン・カレッジ(カナダ、1991〜93年)。96年6月ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス国際関係学部卒業、同年7月三菱商事入社。ギャガ・コミュニケーションズ、GEを経て、2006年2月より現職。